-
心が動く瞬間を、ていねいに拾い上げる
子どもたちと過ごす毎日の中で、
ふと胸があたたかくなる瞬間があります。そんな一瞬を何より大切にしたいと思っています。
その考え方や姿勢については、
奈良で認定こども園としてまとめたページでも触れています。ここでは、日々の保育の中で感じている想いを少しだけお伝えします。
■ 大きな成長より、心の変化が尊い
子どもたちが見せてくれる成長は、
いつも静かで、派手さのないものです。昨日、できなかったジャンプが今日できた。
ひとことも話せなかった子が、
自分から小さな声で「いっしょにあそぼ」と言えた。その瞬間に拍手は起きません。
誰も気づかないかもしれません。でも、その内側では
“自分でやってみよう”
“前へ進んでみよう”
そんな想いが確かに芽生えています。その芽は、
すぐに花を咲かせるわけではありません。
静かに、ゆっくり、地面の下で根を張ります。
■ 泣く日、迷う日、止まる日——全部、育ちの途中
子どもたちは、いつでも前に進めるわけではありません。
泣いてしまう日があります。
立ち止まってしまう日もあります。けれど、
それは後ろ向きになったわけではありません。迷うからこそ、考える。
悔しさを知ったからこそ、誰かに優しくなる。
涙を流したからこそ、また笑顔になれる。できなかった日にも価値があります。
むしろ、その時間があるからこそ
「できた日」が輝くのです。
■ 大人の役割は、急がせることではなく“信じて待つこと”
保育の中で、もっとも大切なことは
“できるようにする”ことではありません。子どもたちが自分の力で立ち上がる瞬間を
そっと待つことです。大人が手を出しすぎてしまえば、
子どもは挑戦する機会を失ってしまう。大人が答えを先に提示してしまえば、
悩む時間から得られる学びが消えてしまう。だから、待つ。
信じる。
寄り添う。その積み重ねこそ、
強くしなやかな“心の根”になります。
■ その瞬間に立ち会えることが、何よりの喜び
小さな手が、はじめて友達の手を握った日。
涙で振り返っていた子が、
自分の足で前を向いた日。その姿を間近で見守る瞬間、
保育という仕事の尊さと重さを強く感じます。「今日も一緒に過ごせてよかった」
そう思える時間が、本当にたくさんあります。
■ 最後に
子どもたちの心は、
静かに、ゆっくり、そして確かに前へ進んでいきます。その歩みを整えるのではなく、
その歩みに寄り添う存在でありたい。これからも、
子どもたちが自分の力で未来を開いていく姿を
ていねいに見守り続けたいと思います。