昼下がりの園庭に、秋の風が吹き抜ける。
ブランコの鎖が小さく鳴り、落ち葉の上を子どもたちが駆けていく。
ひとりが転べば、もうひとりが手を伸ばす。
その姿はまるで、まだ言葉にならない“やさしさ”の形のようだ。
そんな日々の瞬間を大切にしているのが、高田のこども園だ。
ここでは、特別な行事よりも、日常の中にある小さなできごとを見つめている。
靴を自分で履けたこと、友だちに“どうぞ”と言えたこと。
その一つひとつを先生たちは丁寧に喜び、子どもと同じ目線で笑い合う。
保育室には、子どもたちが描いた絵が並ぶ。
大きな太陽、長い手足、にこにこと笑う顔。
その絵のどれにも“その子らしさ”がちゃんとある。
大人が整えすぎないからこそ、子どもたちの個性が自然に滲み出てくる。
「うまく描けたね」ではなく、「楽しそうに描けたね」と声をかける先生。
評価ではなく共感の言葉が、子どもの心に安心を残す。
それがこの園の保育の根っこにある考え方だ。
給食の時間になると、厨房からおだやかな匂いが漂ってくる。
食卓を囲む声が混じり合い、「おいしいね」と笑う声が響く。
子どもたちの手の中には、スプーンと小さな自信がある。
食べられる量も、食べるスピードも、みんなちがっていい。
その自由を守ることも、先生たちの仕事のひとつだ。
午後のひととき、窓からの光が床に模様を描く。
その上でパズルを広げる子、絵本を読む子、静かにひとり遊びを楽しむ子。
誰も急かされず、それぞれの時間がそこにある。
この“ひとりひとりのペース”を大切にできる園こそが、本当の意味での学びの場所なのだと思う。
先生たちはよく言う。
「子どもたちから教わることの方が多いんです」と。
泣きながらも諦めずに挑戦する姿、友だちを思って手を差し伸べる瞬間――
その度に、大人もまた“人としてのやさしさ”を取り戻す。
夕方、園庭に長い影が伸びていく。
先生が「そろそろお迎えだよ」と声をかけると、子どもたちは「また明日ね」と手を振る。
その一言にこめられた信頼の重さ。
園は、毎日の別れと再会をくり返しながら、絆を深めていく場所でもある。