毎朝、園の門をくぐる足が鉛のように重い。子どもたちの元気な声が、以前のように心に響かない。大好きだったはずの仕事が、ただつらいだけの苦行に感じられる。もし、あなたが今そんな状態にあるのなら、それはあなたの心と体が発している、限界寸前の「SOSサイン」なのかもしれません。保育士は、責任感が強く、我慢強い「頑張り屋さん」が多いからこそ、自分のつらさに蓋をして、無理をし続けてしまいがちです。インディード×大和高田保育士しかし、そのサインを無視し続けると、心はポッキリと折れ、うつ病や適応障害といった心の病に至ってしまう危険性があります。ここでは、限界が来る前に気づきたい心身のSOSサインと、本当に無理だと感じた時に自分を守るための具体的な対処法についてお伝えします。まず、あなた自身の最近の状態を、客観的にチェックしてみてください。身体的なサインとしては、「なかなか寝付けない、夜中や早朝に目が覚めてしまう」「食欲が全くない、あるいは過食してしまう」「原因不明の頭痛や腹痛、めまいが続く」「理由もなく涙が出てくる」「常に体がだるく、休日寝て過ごしても疲れが取れない」といったものが挙げられます。精神的なサインとしては、「仕事に行くのが怖い、憂鬱で仕方がない」「以前は楽しめていた趣味が、全く楽しいと感じられない」「何事にも興味が持てず、無気力になる」「ささいなことでイライラしたり、攻撃的になったりする」「集中力が続かず、簡単なミスを繰り返してしまう」などがあります。これらのサインが複数、かつ2週間以上続いている場合は、かなり危険な状態だと認識してください。これは、あなたの「甘え」や「気合の問題」では決してありません。過度なストレスによって、脳の機能が正常に働かなくなっている、明らかな不調のサインなのです。これらのSOSサインに気づいたら、まず取るべき行動は、とにかく「休む」ことです。「私が休んだら、他の先生に迷惑がかかる」「行事の前だから、休めない」。そう思うあなたの真面目さは尊いものですが、今、あなたが倒れてしまったら、それこそが職場にとって一番の損失です。有給休暇を取得することに、罪悪感を抱く必要は一切ありません。数日間、仕事から物理的に距離を置き、ただただ心と体を休ませる時間を作ってください。その上で、一人で抱え込まず、信頼できる家族や友人に、今のつらい気持ちを話してみましょう。誰かに話すだけで、心は少し軽くなるものです。それでも状況が改善しない、あるいは、すでに心身の不調が深刻で休むことさえままならない場合は、迷わず専門家の助けを借りてください。具体的には、「心療内科」や「精神科」の受診です。日本ではまだ、精神科への受診に抵抗を感じる人も少なくありませんが、風邪をひいたら内科に行くのと同じように、心が疲れたら専門医に診てもらうのは、ごく自然で賢明な選択です。医師はあなたの状況を客観的に診断し、必要であれば薬を処方したり、休職を勧めてくれたりします。医師の診断書があれば、職場も正式に「休職」を認めざるを得ません。休職は、キャリアの終わりではありません。壊れてしまう寸前の自分を救い出し、再び元気に働くための、大切な「充電期間」なのです。そして、休職期間中に冷静に自分の状況を見つめ直した結果、今の職場に戻ることが、どうしても考えられないという結論に至ることもあるでしょう。その時は、「転職」という選択肢を真剣に検討してください。ストレスの原因が、職場の環境そのもの(保育方針、人間関係、業務量など)にある場合、あなたがどれだけ努力しても、状況が改善しないことは多々あります。あなたを苦しめる職場が、保育の世界の全てではありません。世の中には、もっとあなたに合った、働きやすい環境が必ず存在します。今の職場から「逃げる」ことは、決して負けではありません。それは、あなた自身の心と人生を守るための、最も勇敢で、戦略的な決断なのです。どうか、自分を追い詰めないでください。あなたの代わりはいても、あなたの人生の代わりは、誰にもできないのですから。